なんとも言えない不穏な雰囲気をまとうオープニング。
3ピースバンドとは思えない迫力で迫る激重高速リフ。
音を止めて命売ります!と単語をはっきりしゃべっちゃうサビ。
そして始まる、バラババンババラババンバ...はぁ!?バラババンバ?
Hey!What' a Hell!Who is this sick mens!?
(sick=日本語で言う所の、良い意味で「やべぇ」という意で使われがち)
圧倒的な実力、圧倒的な個性、唯一無二の文学性を兼ね備えた、「普通」という概念から飛び出しまくったバンド人間椅子の命売ります。
まぁ、とにもかくにもまずは見て、聴いてみてくださいよ↓↓↓
三島由紀夫の「命売ります」をドラマ化するにあたって、タイアップ曲として作られたのがこの人間椅子の「命売ります」。
なんだ...この解説だけ聞くと一流アーティストみたいなムーブは!?いや、この言い方は色々な方面に失礼かもしれない。申し訳ありません。
本当に死ぬまで言い続けると思うんだけれども。3人ですよ、3人。この音圧で3人。
スタジオ音源としてはギターソロ部分でリズムギターも入れる、という意味での重ね録りはしているとして。Liveではマジで3人。
サポートギターが入るとか、裏で音を差し込むとか、そんなの一切無し。正真正銘の3人で放たれる音は...もう聴いてもらうしかないんだけれど。Sick!だ。
タイアップだから、ということではなく、元々彼らは文学から直接インスピレーションを得て楽曲を作るスタイル。昭和文豪の作品を音楽で表現する、というのは通常運転なわけです。
少し古風な文豪的な歌詞、載せられる決して単純ではないメッセージ。これを人間椅子が歌うことで、実にすっと摂取出来る不思議。見た目も文豪ですもんね。
しかし、その音は聴いてもらっての通り、何ともハードでドゥーム。
3ピースだ、文学的な歌詞だ、この井出立ちだ、なんていう様々な要素は全て無視したとしても、何を置いてもとにかく楽曲が良い。音が良い。
ゴリゴリの音。スーパーギターソロ。楽曲がメタルヒーローなんよなぁ。
当然、要所要所に不協和音や「らしさ」全開の展開はあるけれど、彼らの得意な複雑な展開等は抑えつつ、誰でも聴きやすいタイプのシンプルな構成となっております。
ん?曲のサビでバラババンバ...なんて曲は聴いたことがない?それはそうねぇ、失礼しました。
原作?と言って良いのか解らないけれど、「命売ります」という三島由紀夫の作品についてふれておく。
自殺に失敗した主人公は、「命売ります」という広告を出して、自分の命を対価として投げうるような様々な仕事?場面?に身を投じて行きながら、生と死の在り方や変化していく主人公の心境がつづられていくという物語。
一話完結みたいなイメージで、「命売ります」という広告をきっかけとした様々な人々が織りなす出来事が描かれて行くわけだ。
今現在これを見ると、「ありがち」「割と鉄板設定」「何だかドラマ映像が想像出来て目に浮かぶ」ような感触だと思う。
けれどこれ、1968年の作品ですよ。昭和43年。江戸川乱歩とかもそうだけれど、今読んでも普通に読めるというか、古臭さを感じないというか。
時代設定は「当時の現在」を描いているから古めかしいんだけれども、まるで今現在に当時の設定で物語を書いた、ようにも見えるほど。
当時の文化や生活がありありと見えるようで、中々面白いですよ、こういう小説とかを読むのもね。
最後にMVについて少し。
この白黒、真っ黒背景に白く描かれる雰囲気、凄く好きです。
3ピースバンドがみんなで向かい合うように演奏する姿も好きだし、田中泯さんの踊りも実に雰囲気が合っていて良い。
そして...これよこれ!たまらんわぁ。