マイツの小部屋

陰キャのための音楽ライフ

チラシの裏_015 ライブハウスのダンシングヒーロー

最近の生きる糧と言えば、来年に控えたArch enemyの来日公演。感染症の流行が再拡大している今、その開催すらも安心は出来ないんだけれども。とにかくこれを楽しみに生きて行くしかない。

まぁ、ただでさえインフルエンザが流行するこの季節。ある程度の再流行は想定の範囲内ではある。むしろ声出し厳禁、距離を保った行動で、なんていう制限付きのLiveになるのであれば、自分にとってはむしろ好ましいスタイルではあるんだけれども。

 

とにもかくにもLiveが楽しみな今日この頃。自然と過去のLiveの記憶に想いを馳せる。

あれよあれよという間に、Liveハウスから大きな会場まで、あちこちのLiveにお邪魔することになったわけだけれども。かつては自分も「Liveなんて怖くて行けねぇ」という考えを持っていた。

 

恐いというと語弊があるかな?不安と心配と言うか。音楽は本当に好きなんだけれども、何と言っても超陰キャ

曲に併せて「のる」ということが出来ない。

人前で拳を上げたりはしないよ?メロイックサインなんて一回もやったことはない。

Live会場で歓声を上げたこともなければ声掛けだってしない。

未だに腕組み仁王立ちが基本スタイル。せいぜい体を揺らすくらいだ。

こんな自分がLiveに行っても良いんだろうか?ノリが悪い、なんて演者や周りの人達に思われないだろうか?なんてね。

 

今なら胸を張って言えるし、不安を持つ人が居たらこう言いたい。

 

心配ねぇ、行きたいLiveに行くのが幸せってもんよ?

 

こう思えるようになったのは、ある一人のヒーローとの出会いがある。

 

 

 

あれは地方のLive会場であった。まぁまぁマイナーなバンド。それも中々にダークサイドな音楽だ。アイドルがステージに立ってわーきゃー言うLiveとは違う。客層もかなりえぐい。

全身ジャラジャラ言わせてタトゥーだらけで〇殺しにしか見えない人。全身ピアスで真っ赤な長髪をなびかせるレディ。常に斜め下を見下ろしながら、ブツブツと呪文を唱えているような人達。実に様々だ。

 

そんな方々に対して自分は何を思ったか?「無」でした。驚くほどに。だってそこはマイナーバンドのワンマンLiveを演る小さなLiveハウス。そこに居るのはそのバンドのファンばかり。

 

この時点で、全員ブラザーなわけよ。

 

実際そうはしないけれど、きっと上手い酒が飲める。もし困っていたら助け合える。音楽がつないだ不思議な縁に、知らぬ間に強く結ばれてしまっている。

 

この日はチケ番もそれほど良くはなく、客の入りも万全だったのにも関わらず、会場内の流れに乗った結果、奇跡的にほぼ最前の端っこ付近に位置取る結果となった。最前におわすは歴戦の猛者達。そんな中に、一人の若者が居た。

歳の頃は20代前半だろうか。単髪。ジーンズに白Tシャツ。自分と同じ、絵に描いたような陰キャでイケていないタイプだ。

 

おぉ、自分と同じオーラを纏う方でも最前に立つんだな、なんて勝手な親近感を覚えるのも束の間、Liveが始まり爆音につつまれる。

こういうLiveの最前と言えば、それはもうファンクラブ会員の皆様であり、最前で楽しむことを命題としており、結果ヘドバンの嵐が巻き起こるわけで。

それは熟練の、洗練された動き。「メタルLiveの最前列はかくあるべき」というイメージ通りの完璧なムーブ。自分の中で、「メタルを最前で楽しむならこういう動きをしなければいけないんだよ」と勝手に作り上げて、思い込んでいたムーブでもある。

 

それでは自分と同じく陰キャ全開の青年はどうLiveを楽しんで居たか?彼は、最前の限られたスペースで「踊って」居たのだ。

世間一般の目線で見たら、きっと奇怪な動きに見えたであろう。ダンスの心得など一切なさそうで、思うがままに体を動かす、子供が無邪気にはしゃぐような動きとも違う、カッコ良さや見栄なんてクソ溜めに捨てて来たぜ?と言わんばかりのアツさや力強さに満ちた動き。

当然Liveの最前列。スペースは限られているし、周辺に迷惑を掛けるようなことはしない、好き勝手ではない踊りをしていた彼の動きは、どうしたって美しいものとは言い難い。

 

けれど、本当に本心から、その姿は自分にとってはダンシングヒーローであった。

 

「一般人」というありもしない勝手に作り上げた目線では、彼は滑稽かもしれない。けれども彼は音楽を愛し、全身で音楽を楽しみ、自分なりのエネルギーの爆発を表現している。

演者はそんな彼に対し、超絶ギターソロで応酬する。他の最前の観客達と同じように、彼をもまたロックオンし、踊る彼にめがけて全力のエネルギーを放ち、彼もまたそれに応える。

今この瞬間、音楽を通じて彼は演者と、ライブハウスと、我々観客とも一つになっている。そこには常識も、遠慮も、煩わしい煩悩の何もかもがない。そこにあるのは最高の音楽と、それをぶつけられて溢れ出たエネルギーだけだった。

 

 

 

ライブが終わり、誰とも言葉を交わすこともなく会場を後にする彼。自分もまた同じく、誰と言葉を交わすこともなく、圧倒的な熱量を胸に帰路に付く。

 

人生は有限。今も確実に終わりへのカウンダウンが進んでいる。好きな物を全力で楽しむことに、躊躇している暇なんて1秒もないんだと、最高の漢と、最高の音楽とが、自分に教えてくれた気がする。

音楽のジャンルにも、ライブの形にも、きっと色々あるだろう。演者にも、観客にも、色んな人は居るだろう。

 

けれど、類は友を呼ぶというし、その音楽が好きな人はきっと似通る。

 

もしも大好きな音楽のライブに参戦出来るチャンスが巡って来たなら、是非ともその世界に飛び込んでみて欲しい。あなたが好きだと思った音楽であれば、きっと悪い結果にはならないはずだ。

 

ちなみに、世の中にはヘヴィメタルっていうジャンルがありましてね?演る人も聴く人も頭おかしいんでね?安心して参戦してよろしくてよ?