マイツの小部屋

陰キャのための音楽ライフ

チラシの裏_017 豚しゃぶを食べるなら、あなたはポン酢派?ゴマだれ派?

つい先日の記憶。

6畳の部屋に小さなコタツを差しはさみ、友人と豚しゃぶをつついている。お互いにもりもりと行くような歳ではない。ちびちびとお酒を飲みながら、じっくりと時間を掛けてこの時間を楽しんでいた。

肴として用意した安いたくあんは、既に表面が乾き始めている。その姿からも、結構な時が流れていることが解るのだけれど、飽きもせずに延々と議論が続いている。

 

豚しゃぶを食べる時、ポン酢なのか?ごまだれなのか?議論。

 

当時は別に何にも考えず、いつものように、あーだこーだと言い合っていただけなんだけど、今あの風景を思い出して、良いなぁ...なんて感じているわけです。

 

 

何が良いかって、やっていることは議論なんですよ。私はポン酢派だ、相手ははごまだれ派だと。言ってみれば戦い。自分の主張を通し、相手を従わせたら勝ち、とも言えるようなやり取り。

けれど、あくまでも平和な議論というか、「好き」vs「嫌い」の戦いではなく、「好き」vs「好き」の戦い。「推し」vs「推し」の戦い。

 

おい、いいか?よく聴け。確かにお前の言う「ごまだれ」はぶっ飛んだサイコーの奴だ。赤身肉の旨味をたっぷりまとったモモ肉と併せれば、ゴマの甘味でジューシーさを何倍にも高めてくれるさ。出汁で温まった淡泊な豆腐に併せても、抜群の破壊力を発揮するよな。

でもな?このポン酢を見てくれよ?バラ肉の甘い脂身の旨味をぐっと引き締めてくれるんだぜ?こねぎの薬味との相性も抜群さ。日々に疲れた体に柑橘の酸味がよく染みてなぁ...野菜との相性も良いし、なんなら〆のうどんだってこいつでさっぱりイケちまうんだぜ?

 

ポン酢を食べては二人で舌鼓。ゴマダレを食べては二人で舌鼓。あっちが良い、こっちも良い、という褒めと褒めの罵り合い。こうやって書くとバカバカしい、どうでも良い話にも聞こえる。そんな「程度」の話だからそんなちんたら出来るんだろ?というのも解る。

けれど、ほんの少しだけ、このノリを世の中に普遍的に応用できないだろうか?なんてことを思う。

 

 

例えば仕事での議論があるとする。AルートとBルート、どちらを選ぶか?

そのどちらにも一長一短があって悩ましい、というのは第三者目線だ。大抵、渦中にある人の頭の中はそれほど平和ではない。

「Aしかありえないだろ、Bを考えるやつなんて馬鹿じゃないのか?本質が見えていないのか?そもそも論だろ。」

「Bだな。Aはまず実現が出来ない。理想論だけで現実が見えてないのか?それじゃあいつまでも進まないぞ。」

という、それぞれの立場からの実に最もらしい主張のぶつかり合いだったりする。もちろんその方針次第では日々の作業、今後の行く末、ひいては事業の成否や明日の生活が掛かっているわけだ。

 

確かに、ポン酢vsごまだれとは度合いが違う。けれど、議論して何かを決めるという行為は同じ。考え方、方向性は同じように出来ないだろうか?

そちらの〇〇はダメだ、一方でこちらの△△はそこを補える、ような引き算の議論ではなく、そちらの□□は確かにメリットが大きくて最高だ、でもこちらの☆☆のメリットだってこんなにうめぇぞ?的な。

ネガティブキャンペーンなんて言葉を聞く。その逆があるのかは分からないし、人間の心理とかを考えれば、ネガティブに着目した方が効果的なのもよく解る。けれども敢えて、ポジティブに拘ること...をやりたい。

 

自身の本質がネガティブだからこそ、演じるようにポジティブにすがりたい。

 

 

仕事をする上で、色々な相談を受ける場面が多い。上司、同僚、後輩、社外の専門家等々。最近、その中で自然と身についている癖があることに気が付いた。

それは、相手の考えを直接否定することは絶対にしないこと。出来るだけ相手の主張やアイデアを活かすこと。相手を否定出来ない弱さ、ネガティブな性格が生んだ、ポジティブなやり口、と考えると中々に面白いかもしれない。

 

経験の少なめな若手からは、時に無茶な、けれど面白いアイデアが出る。

そのアイデアで進めると、成果は60点だろうな。もしも私が考えるやり方ならば、90点は行けるだろう。けれど、若手のアイデアに私のアドバイスで補強して75点が取れるならば、敢えてそちらを選択する。

この瞬間は15点損するかも知れない。けれど、ここでアイデアを活かし、他者のアドバイスも応用してやり遂げるという経験値を積んだ若手は、将来的にはもっと多くの点を獲得してくれるはずだ。

 

若手のアイデアを否定して、考えを押し付けて、つまらない思いをさせてまで、たったの15点を自分の手柄として手に入れることに価値を見出せない。

そんなことより、モチベーションを高く保ち、面白い面白いと言いながら成長していく若手が手柄を立てていく姿を見るのがたまらなく楽しい。

 

こうしてポジティブ寄りにしていくと、良いことだらけだ。こちらは相手を否定する必要がないので気楽だ。相手も否定されないので気楽だろう。

いつも相手が「それなり」に正しいとは限らない。時には根本的な誤りがあって大きく考え方を変えてもらわないといけない場面も当然ある。けれど、普段から良い空気が出来上がっていれば、信頼感があれば、軋轢は生まれない。win-win過ぎる。

 

 

ポン酢ごまだれ戦法。うわそれあちぃ~、でもこっちもすげえよ?戦法。いつでも使えるほど世の中簡単ではないけれど、使える場面だけでも使っていくと、ちょっとだけ世の中が良くなる気がするんだよなぁ。割と本気でさ。