たっぷりと、最高のメタルに浸らせていただきました。様々な想いを巡らせ、何度も咀嚼し、ようやく一息ついて、すっとお茶を飲むような気分。
そうなってくると、少しだけ趣きを変えた音楽を聴きたくなるのが人情というもの。こってり料理が続いた後はサッパリした物が食べたくなるし、しょっぱい物と甘い物のデンプシーロールはおやつ界の鉄板でもある。
そんな軽いノリでかけて見た楽曲がこちら。
いや爽やかだけど...これ別に軽くはねぇなぁ!©カミナリ
鬼束ちひろの割と初期の頃のアルバムThis Armorのエンディングを飾るCROW。なんかもうこんな音楽ばっかり好んでいる自分にちょっとため息。もっとミネラルウォーターみたいな音楽は持っていないのかね?君ってやつは...
2000年を超えたあたりで現れた『鬼束ちひろ』という存在。当時はそれなりに世間は沸いた記憶があります。
女性一人で歌うスタイル。
アイドルっ気は無し。しかし美人。
名プロデューサーに引っ提げられて...でもない。
ギター片手に弾き語る感じでもない。
音は綺麗だけれど、そこはかとなく纏う闇。
多様化が進む近年に立ってこれを見てみれば、「うん、まぁそういうアーティストだっているっしょ?」という所ではあるけれど。まだまだテレビやマスメディアが覇権を握り、世の中の流れがひとつのようにも見えていた当時ですよ。世の流れとは異なるこういうアーティストが現れ、売れ、バズったことは、レアケースだったように思います。
実際、ライブに行ったこともありますけどね。ガッチガチのガチでしたよ。化け物みたいな声量に、親近感と真逆に位置するようなオーラを纏い、それはもう、すごい音楽を聴かせてくれました。
このCROWという曲。とても綺麗で、伸びやかで、アルバムのエンディングにぴったりな雰囲気です。This Armorというアルバムに対して、この曲の中ではこんな言葉がつづられます。
この鎧は 重すぎる 私には とても
もう誰も あなたを せめたりしない
そんなの 早く 脱いで
そして、最も気になったフレーズがこちら。
こんな価値のままで、どこにたどり着くのだろう?
肥大する糧 光達はその輝きを増すばかり
気が付けば重厚な鎧を着ていた、なんて。あるあるだと思うんですよ。必ずしも、そんな鎧を着たいと思っていたわけじゃない。気が付いたら着ていた。環境に、現実に、着させられていた。もう、鎧を着るしかなかった。頑張って生きていくには、この道を進むには、それしかなかった。
おかけで茨の道も進むことが出来た。そこまでして進んだ結果、確かに得られる物もあった。周囲も褒めてくれているように感じる。けれども。何だかそんな鎧を着ているんだし、君はその茨の道を頑張って進んでね、よろしくー!なんていう雰囲気に、辟易しては居ないだろうか?
自分が進みたかった道って、本当にこっちだったっけ?
自分のこともそうだし、鬼束ちひろというアーティストについても、何だか勝手に色々と考えてしまう。
これだよ、また考えてしまっている。頭を空っぽにして、ただただ楽しい音に包まれるような、そんな音楽を持っていないのかね、君は...