マイツの小部屋

陰キャのための音楽ライフ

定年退食...やべぇ!(定年退「食」)

最近NHKで放送している藤子・F・不二雄の短編物語を実写ドラマ化するシリーズ、の中で放送されたこの定年退職食。以前から、衝撃的かつ秀逸な物語として有名でしたが、実写化されると...やばいです。

 

ご存知のない方向けの超ざっくりあらすじ。

近未来のお話。世界的な高齢化が進み、環境汚染的なナニモノカが原因の食糧難の中で、国家にも定年制度が導入。高齢者には年金はおろか、食料等の支援も一切打ち切られる世の中。主人公はその対象となる高齢者であり...というお話。

NHKオンデマンドで視聴できるみたいですよ。6/3(土)に再放送があるのかな?

 

これ...ズドンと腹に来ますよ。精神的に健康な状態じゃなければ見ない方が良いかも。

 

あらすじだけを見れば、ありがちなディストピア物の予感がしますが、そうは行かないのが凄いところ。主人公にはちゃんと息子夫婦がおりますし、「明らかな問題提起」や「明らかな悪役」も存在しないのです。

 

それがどこまでも静かにリアルで、その中であくまでも主人公の機微だったり、無常観であったりが描かれているし。ラストシーンも派手なひとつの結末を描く、わけではなく、悲しいようで、優しいようで、何とも言えない情景が描かれます。

仕方のない、そこにある現実が描かれているような、まるでノンフィクションのドキュメンタリーを見ているような気分になります。

 

この作品の凄さを挙げれば本当にキリがありません。

実際に短編漫画が作られたのは50年前!50年前ですよ!

なのにこの超絶なリアル感。想像力、創造力のえげつなさ。

実写として演じた演者の方々の名演。

原作を忠実に再現した、実写化スタッフさん達の素晴らしさ。

 

50年前当時では、突拍子も無い、救いの無いフィクションと読み取る方も多かったかも知れません。

けれども、高齢化が実際に進み、定年の年齢もどんどん伸びて行き、年金だってどうなるやら解らず。食糧難の話は世界共通認識ででコオロギ食というワードも有名だし、マイナンバーが世界的にも普及し、国民を点数で評価する的な考えだって一部の国にはあるわけで。

 

そしてとかくリアルなのが、悪役とか、悪い問題とか、そういう事ではない所。

 

なんてひどい話だ!こんな事は大問題だ!正しい考えの下にあるべきだ!とか、そういうお話ではないんですよ。

劇中の世界は、目の前に広がる抗えない現実を前にして、あくまでも限りなく現実的、平和的な方向に舵を取って、世界が一生懸命辿り着かざるを得なかった世界、のように思えるんです。

 

少しセンセーショナルに描いたとして。世界崩壊が目の前に迫り、助かる命は限りある状況。未来は君達の物だ!と年配者達が若者達に希望を託して散って行くシーンがあるとする。きっとこれは美談的に描かれてもおかしくないでしょう。

言葉選びが難しいですが...事象・事態・状況としては、間違いとも言い切れず、どうしようも無い事、なんです。

 

人間には寿命があっていつかは去らざるを得ないように、どうしようも無い事は存在する。それを前にして、自分だけでなく、周りも社会も最前を尽くしたとて、それでも「どうしようも無い事」がある。

そうした事を目の前にした時に自分がどう生きるのか。そのひとつの姿を描いた物語のように映るわけです。少なくとも、私の目にはね。

 

細かいシチュエーションは異なるでしょう。そんな事を考える暇も与えられないかも知れない。けれど、いつか終わりを迎える我々は、少なからずこういった局面の前に立たされる場面があるはずです。

正解なんてないけれど、自分だったらどうするかな?という思考を巡らせておくことは、無駄ではないかも知れません。

 

弱った精神には、少々ハードな作業ですがね...

 

 

↓↓↓音楽の話はこちら↓↓↓

マイツの部屋 (meischland.com)

 

↓↓↓最近の音楽記事はこちら↓↓↓

「ヘヴィメタルで」_THE冠 この一瞬だけでも、音楽で苦しみを忘れたい - マイツの部屋 (meischland.com)