マイツの小部屋

陰キャのための音楽ライフ

色が戻る瞬間

色をなくすとか、モノクロの日々とか、そういった言葉があるように。どうにもしみったれた日々を送っていると、何だか「色が無い」という感覚に陥ります。

その色が、ふと戻りましたよ。一瞬だけね。そういうお話。

 

連休三日目。強引に出かけようと決めていました。

どこへ行くかは定まり切らなかったけれど。どこかへ行き、ひとが居る場所に触れ、何か美味しい物でも食べて、ちょっと面白いものでもあれば手に入れて。

そうやって、少しでも気分を盛り上げて行こう。そういう予定でした。

 

朝早くに目が覚めてしまい、どうにも手持ち無沙汰で予定よりも早く家を出る。さてどこへ行こうか、まだ時間も早いし軽くドライブをしつつ...

そうこうしているうちに、ランダムで流していたカーオーディオからこの曲が流れて来ます。私の青春時代に、多感な心を頭からすっぽり漬け込むように聴き込んだこの曲を聴く内に、正に「色が戻った」感覚を受けたんです。


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きっかけは、色と言えばこれ!と言わんばかりの「色恋沙汰」の思い出。

陰キャでクソみたいな青春時代を送った私でも、片思い的な色恋沙汰はそれなりにありました。近所のあの子が気になる、同じクラスのあのひとが...レベルの、どこにでもあるような物ですけどね。

当然恋愛に発展することもなく。だからこそ失恋することもなく。勝手に頭の中で妄想したり、期待を持ったり。もしかしたら?ひょっとして?なんて、都合の良い思考に随分と溺れた記憶があります。

 

この曲にも、そんな青春時代の一幕がくっきりと焼き付いておりまして。この曲を聴くことで当時を思い出し、その頃の気持ちを思い出し。

これから色恋沙汰なんて物があるとも思えず、有ったとしても自身が欲するとも思えないけれども。

世界の中の、ひときわしょぼい私の人生ではあるけれど、色恋沙汰なんて華やかな物が存在したって良い。そんな気持ちを持って生きられていた時代は確かにあったんだよな。

 

そんな想いをきっかけに、夏の青空が妙に青く、彩り豊かに見えましてね。

そのふわふわとした、今にも消えてしまいそうな感触を手放したくなくて。

この得難き時間を途切れさせたくなくて。

早朝からのドライブは、どこへたどり着くわけでもなく。大きく大きく県をまたぐように走行して自宅へ戻るという、なんとも不思議なゴールへたどり着きました。

帰る頃にはほとんど消えてしまったけれど、めちゃくちゃに心が整うドライブとなったのです。

 

あくまでも色恋沙汰の記憶はきっかけだと思うんです。

あの頃は、本当に実現するとは思えなくとも、「そうなったら嬉しいな」という思考を持つことが出来ていました。

こんな事になったら幸せかも知れない。

素敵なひとと出会ってお付き合いなんかしちゃったりして。

好きな楽器がめちゃくちゃ上手くなれちゃうかも知れない。

宝くじが当たってお金持ちになったりして。

何か成功をおさめてひとに尊敬されたりして。

誰かを助けられるようなヒーローになれちゃったりして。

 

気が付けば、今の私はそんな気持ちなんて一切持てなくなりました。

世の中のことを見た気になってしまっている。自分の能力も限界も解った気になってしまっている。

世の中はこんなもの、人生はこんなもの、夢みたいな出来事なんて起こらない、異世界転生なんてあるわけもなく。

自分が努力して掴み取らなければ何物も得る事は出来ず、小さな幸運すら舞い降りることもありゃしない。

「この先にこんな良いことが待ってるかも知れない」という妄想すら出来ない。

そりゃあ、モノクロの日々にもなりますわな。

 

じゃあ、今から希望を胸に抱きましょう!とは行かないけれど。

もうちょっと、何も知らなかったあの頃みたいに。

良く言えば純粋な気持ちを、悪く言えばバカみたいな浅はかな考えを、少しだけでも取り戻して行きたいな。

 

そして願わくば、いつか人生の最期を迎えるその日にも。

こうして昔を思い出して、バラ色ではないけれど、ちゃんとそこに自分なりの色が有ったことを思い出して。

このふわふわとした感触を持ちながら、眠りにつきたいものですねぇ。