とても単純な思考回路を持つ私は、一週間の締めくくり、金曜日の夜というのは静かにしっとりとしたエンディングテーマを掛けたくなる。
自分的お気に入りエンディングテーマは数えきれないほどあるけれど、その中の1つがこの「失われた眺め」。
1993年にインディーズで発売された、ロックバンドのデビューアルバムの最後を締めくくるこの曲。
もう一度言いますよ。
1993年という昔、インディーズでデビューした若いバンドが、デビューアルバムの最後に収録したのがこの曲。
は?嘘だろう?王者の貫禄しかないだろうこんなの!
ある一時代に天下を獲ったバンド達の一つと言っても良いと思う。L'Arc〜en〜CielのデビューアルバムDUNEのラストを飾るこの「失われた眺め」。しっとりと、且つ重厚な夜更けに、この曲で一週間を締めくくりたい。
言いたいことはほとんど言ってしまいましたが...
この曲。ピアノとヴォーカルで構成されたシンプルな楽曲となっております。
しかもピアノだって非常にシンプル。大半はコードでの伴奏に留まり、ピアノで派手に修飾するような雰囲気はない。
そこに一本太く突き刺さるのがHydeの歌声。彼の歌声はいわずもがな。特徴的な声色、歌い回し。独唱スタイルでも十分に持っていけるくらいの迫力を持つ。
今思えば、ピアノ伴奏でHydeがじっくり歌い上げるという姿勢は、鉄板中の鉄板というか、そりゃあ良い曲になるよね、と言ったものだけれど。
何度も言いますが、これ、若手バンドのインディーズのデビューアルバムなんですよ。
あの時代。これから天下獲ろうぜ!と燃え上がる若いバンドが。全身全霊を込めたデビューアルバムでいきなり、ヴォーカルのピアノ独唱を持って来ますかね?
圧倒的な歌唱力と実力があり、尚且つバンドとしてもそれを最大の武器としてとらえていて、尚且つ楽曲としても「これぞ!」という仕上がりになっている。
デビューアルバムって、もっと粗削りなんじゃないの?何この仕上がり。
アルバムの曲も全体を通して、プログレ感すら感じる一筋縄では行かない気配を漂わせているし、Hydeの声質も相まって、非現実感や幻想的な世界観も見え隠れ。
デビュー作でこれよ?そりゃあ天下も獲るわ!
歌詞の世界も実に見事。どこか幻想的で抽象的な世界観、物語の一幕のような、エンディングのような内容になつてはいるけれど。
とんでもなく雑に因数分解してしまえば、色々あったけれど振り返り、思い返せば浮かんでくる記憶の断片にふいに涙する。
雑な表現で申し訳ないけれど、誰もが経験する「あるある」なわけで。これだけ幻想的な世界から誰もが共感出来る本質を唄うという辣腕。
そりゃあね。この歳になればあるある中のあるあるよ。小さい子供やご年配の方が犬の散歩をしているだけでも泣ける(ちと言い過ぎか?)な今日この頃。
何を想い出しても、何を目の当たりにしても。膨大になった過去の記憶から色々な物が芋づる式に取り出され、意味のある感情を引き出してくる。
この感覚。若い時分に実感出来ただろうか?表現することなんて出来ただろうか。
当たり前だけど、表現することで生きていく人達って、すげぇよなぁ...