龍凰童子、良きですねぇ。
これだけのシチュエーションで、じっくりことこと煮込んで作られたアルバムが、つまらないわけがない。これを手にした感動の勢いで、もう少しご紹介したいところ...
どの曲にしようかな、あの曲も、この曲も良いな、とあれこれと迷っていたけれど、ここは初期衝動のままに行きましょう。
オープニングから復活の黒猫を燦然と見せ付けた後、さぁさぁ皆様お立合い!いよいよ我ら陰陽座の最高のステージが始まりますよ、というファンファーレ。
陰陽座の龍凰童子から大いなる闊歩。もうこういう曲、ホントに好き。
まずはイントロ。ちょっと今までの陰陽座と雰囲気違くない?どの曲にも通じる陰陽座特有の匂い。「和」「妖怪」のようなキーワードが連想させるような独特の雰囲気。これはもちろんしっかりと有るんだけれど、どこかモダンな雰囲気が漂う滑り出し。
龍葬で復活の狼煙を上げ、鳳凰の柩で黒猫のポテンシャルを見せ付けた後の4曲目のタイミングで、ぐっと一気に雰囲気を変えて来る。そして歌詞の内容。ここか、このタイミングでこういう曲を出してくるか!
曲の歌い出しは待ってましたの男性ベースヴォーカルの瞬火。個人的な好みで恐縮だけれども、この瞬火の歌声は本当に好みでして。陰陽座が「声量お化けの女性ヴォーカルのバンドだよ」という評価に留まらない要素の一つが彼の存在だと思っています。
黒猫が陰陽座の看板娘というならば、瞬火は総支配人。作曲にプロデュースに演奏に歌唱にと、もはや陰陽座の化身、陰陽座そのもの。好き。
歌唱の中心は黒猫が担っていくんだけれども、瞬火の力強い歌唱と、重さとモダン味に振り込んだゴリゴリのギターサウンドもまた、陰陽座のメインディッシュの一つ。展開されるギターソロもどこか色気を感じさせるような、今までとはまた一風異なった景色を見せてくれる。
バンドサウンドの一つ一つが、『あー聴きなれたいつもの陰陽座の曲だなー』と素通りすることを許さない。
そこかしこで『おやっ?』と良い意味で耳に引っかかって来る。
積み上げて来た陰陽座の美味しさに、更なる風味を抜け目なく追加してくる所業。
そりゃあそうだ。この期間で黒猫は困難を乗り越え、歌うことに更に向き合って磨きをかけて来たであろう事と同じように。他のメンバーだって、この時を迎えるためにバッキバキに各々の爪を研ぎ澄まして来たことであろう。
黒猫は確かに陰陽座に欠かせないピースではあるけれど、それは黒猫に限らない。黒猫=陰陽座ではなく、彼ら全員で陰陽座なのだ、という当たり前の姿をあらためて見たような気がする。
バンドとして、音楽を演ることで生きていくと決め、20年以上の時を経て。今回のことだけではなく、今まで色々な困難があったでしょう。耐えがたい苦しみも、代えがたい喜びもあったんでしょう。そうもこうもしながらも、仲間達と一心不乱に進んで来た、この区切りに放たれたこの曲。
そんなこの曲で歌われている歌詞を集めれば、
己が選んだ道を 歩きに歩き抜いた
それぞ我らの行く道の名 これぞ我らの大いなる跡
だが まだ 行こう
そして曲名が、『大いなる闊歩』と来れば。
あちぃよ、熱過ぎるよ。これぞ珠玉のヘヴィメタルよなぁ。