ヘビーメタルを聴けば、溢れる力が湧いてくる。
これも確かな事実ではあるのだけれど、人生いつでも力が溢れていれば良いってわけではないですよね?
時には静かに、じっくりと。辛いことや悲しいことも思い出したりもして。これから自分がどうしていくかに想いを馳せたりして。
そんな時は、さすがに激しい爆裂メタルはシーンにそぐわないというもの。
複雑な想いを噛み締める、大人の哀愁に浸りたい時にこそ聴くべきメタルがある。
本日はIron maidenのJourneyman。たまにはふと立ち止まってこの曲を。
メタルの懐の深さよ...
Iron maidenといえば、ヘヴィメタル最大手に含まれる、もはやレジェンド枠。その音楽性や偉大さについて、自分ごときが語るのもおこがましい。
とにかく、物凄い人達です。という紹介では雑過ぎるかもしれないけれど、概要を語るだけで日が暮れてしまう。
初期のIron maidenは正に王道メタル、シンプルに激しく、カッコ良く。
昨今のIron maidenは大作嗜好が強く、一曲一曲がとにかく長い、プログレにガン振りしたような曲が増えている。
個人的にはその中間あたりが大好物で、このJourneymanが収録されたRAINMAKERくらいの雰囲気が心に突き刺さるんです。
アルバムのエンディングを飾るこの曲。出だしから静かにゆっくりと。オーケストラと共に幕を開ける雰囲気は、ヘヴィメタルとは思えないような滑り出し。
力強さがありながらも、至極静かに、落ち着いて、じっくりと歌い上げるような一曲。様式美としてよくある、大幅な場面転換なども無し。あくまでも終始一貫した世界観が繰り広げられ、約7分の楽曲の中で大きなうねりはない。
静かだけれど、とにかく骨太で力強さを秘めた音色が五臓六腑に染みわたる。
喜びも悲しみも、希望も絶望も、何もかもを飲み込んだような重厚さ。
嬉しいとか、幸せだとか。悲しいとか、苦しみだとか。そんな一片的な物ではなくて、それら全てを内包する物。
旅をする者の歌。それは正に人生そのもの。
この人生をヴォーカルのブルース・ディッキンソンが詩を書き唄う、という点に規格外の破壊力がある。
このブルース・ディッキンソンという存在。漫画や映画の主人公クラスのチートっぷり。調べれば逸話が溢れてくるので興味のある方は是非深堀りしてみて欲しい。
少なくとも私は、ジェット旅客機を操縦出来るようなヴォーカルを他に知らない。
そんな彼が繰り返し歌い上げるフレーズがこれだ。
I know what's I want
And I say what I want
And no one cab take it away
こめられた意味を取りこぼしてしまいそうで、下手に日本語に訳したくない言葉。
理屈として考えれば、極々普通のことではある。
けれど、生きていく上での真理・真髄、たどり着く答えであるような気もする。
そして、多くの歌が、楽曲が、結果として同じような真理・真髄を歌っているような気がしてならない。
世界中の音楽を志す人達が、手を変え品を変え、様々な形で表現すること、声高に叫んでいることは、こうした一つの同じ「メッセージ」に集約していくんじゃなかろうか。なんてことを考えて止まない。