大分肌寒くなってきましたね。
日も短くなって、夜が長い季節がやって参りました。
晩秋の夜長ほど、何かをじっくりと噛み締めて味わうのに適した季節はありません。こういう季節は、ゆっくりと、しっかりと噛み締めながら、どこまでも味が出てくるような音楽を嗜みたいもの。
本日ご紹介しますは、全編11:52にも及ぶ超大作。アルバムタイトルは「将軍」。そしてトラックタイトルはSHOGUN。
目に浮かぶは、志を胸に立ち、信念の下に戦い。血に塗れ、業を背負い、幾度倒れても尚、最後まで抗い、立ち上がる姿。
これはいわば、壮大な大河メタル。
この人のリアクション動画好きなので、貼っておきます。国も文化も違えど、やばい音楽に遭遇した時のリアクションって、メタラーなら皆同じというのが面白い。
Triviumは山口県生まれの日系アメリカ人、マシュー・キイチ・ヒーフィー率いるアメリカのメタルバンド。スラッシュ寄りの楽曲をゴリゴリ展開するハードなバンドだ。
将軍というタイトルから、何だか日本リスペクトというか、日本寄りの楽曲なのか?と思いきや、「変な日本かぶれ」なんて一切無し。ガッチガチの英語圏の楽曲となっております。
和風の音運びをするわけでもない。和風の楽器音を入れるわけでもない。日本語の歌詞が登場するわけでもないし、日本を連想させるような英単語も歌詞に使われてはいない。
このように解りやすくタイトルの「将軍」を直接表現するような手法は取られていないのだけれど。
楽曲を聴いて想起するのは、正に合戦の様相。
これよこれ。これが音楽の面白いところ。
ミドルテンポで重厚感溢れるオープニング。心なしかタムの音が太鼓のようにも聞こえてくる。甲冑を身にまとい、戦場を進み行く足音が聞こえるかのよう。
デスヴォイスとクリーンヴォイスが織りなす迫力の中、響くサウンドの中には一抹の寂しさや哀愁も感じられる。
アルバムもクライマックスに近づく頃。繰り返し歌われる、「時間はあなたの苦しみを全て癒してはくれない」というフレーズ。
そして曲は一気にトーンを落として第二幕へ。
経過時間はまだまだ約4分。ここまでは序章に過ぎない。全体の1/3ですよ?
ギターの音色もクリーントーンになり、しっとりと静かな、けれどやはり悲しげな時が流れる。それは戦の幕間か、虚しさの溢れる月夜の景色か。
差し込まれるギター音は実にブルージィな展開。デスヴォイスの激重メタルからあっという間にこの雰囲気。なんとも鮮やかな場面展開。
そして少しずつ、静かに、ゆっくりと立ち上がるように、楽曲は激しさを増していく。蘇る重厚感。炸裂するギターソロ。
そこには、哀しみを背負いながらも尚立ち上がり、闘い続ける将軍の姿が見える。
もうここの展開は本当に好き。曲展開、音の重厚さ、底知れない迫力に圧倒されるこの感じ。背筋がゾクゾクし、鳥肌が立ち、感動なんて言葉で言い表せない、音楽に昂るこの感じ。
そして将軍は終わりなき戦いに身を投じながら、楽曲はエンディングを迎えていく。将軍の生き様全てが詰め込まれた全編約12分の大作は、その12分という長さを感じさせることなくあっという間に駆け抜けていく。
これもまた生き様、人生というものを表している気がしてならない。
YouTubeリンクを貼ったリアクション動画。メタラーならば首が取れるくらいうなずくように見ていただけるのではないだろうか。
押し寄せるヘヴィネスさに「これは良曲だ!」という確信を隠し切れない序盤。
そして動画にして9分頃~の「この展開かよ!」という笑うしかない感激。
そして9:50頃からおとずれる、もうたまらなくてどうして良いのか解らない身悶え感。
世界が一つになれるなんて微塵にも思わないけれど。隣人達と争い無く生きていけるとも思えないけれど。
メタルという一音楽が好きなだけで、国も文化も飛び越えて生まれるこの一体感。人間ってのはホントにワケ解らない生き物だねぇ。