私には夢がある。
やったこともないけれど、一人キャンプに出掛けるんです。
眺めの良い、ひらけた場所。高台とか丘のように、少し高いところから見渡せるような場所だったら最高だな。
遠くには山が見える。山の中でももちろん良い。
天気は快晴。空には満月。目の前には小さな焚火。
そこに爆音でこの曲を流すんです。
このトラックを知っている人ならば、めちゃくちゃうなずいてくれるでしょう。
知らない人は、は?そんなシチュエーションでヘビメタなんて流して面白いの?と思うでしょう。
Sepulturaの必殺アルバム_Rootsのラストを飾るCanyon Jam。もう...たまらんね。
Sepulturaはブラジルのヘヴィメタルバンド。Sepulturaとは、ポルトガル語でお墓を意味するんだそうで。その名も表す通り、彼らのスタイルはどかーんとメロスピ!というのではなく、ブラック寄りというか、スラッシーなダーク寄りな音楽性。
このアルバムRootsでは、文字通り自身のRootsに立ち返るという意味合いもあるのかも知れない。ブラジルの歴史的な、民族的な音楽を積極的に取り入れており、とても良い意味でオリジナリティ溢れる音楽が展開される。
アルバムに収録された曲の数々は、メタルの主軸を置きながらもそこにブラジルの民族的な音を取り入れた形になっている。そもそものメタルに備わっている「魂を突き動かす何か」に加えて、そもそもの「太古から培われた人類の魂を揺さぶるナニモノカ」までもがMixされたとんでもない出来。
理由は解らない...けれども何故だろう?体が揺れちまうぜ!
的な激熱な音楽が展開されていく傑作アルバムです。普通に考えれば、Ratamahattaとかをご紹介するのが王道なんでしょうが...ここは私のチラシの裏。私が一番衝撃を受けた楽曲をそのままご紹介。
リンクから少しサンプルを聴くと、少しイメージが湧くかと思いますが...そう、アルバムの最後の最後に来て、民族的な音に全振りした楽曲が収録されているんです。
これ、スタジオで収録したのかなぁ?まるで現地...いや、時間さえも飛び越えて、かつてブラジルの地で暮らし、音楽という文化を生み出していった人類にマイクを向けて収録して来たかのような雰囲気。
バックに流れるのは絶え間のない、あちらこちらから聞こえて来る虫の声。ひとたび太鼓を叩けば、その音は広陵とした大地に響き渡り、ゴツゴツとした岩肌や、そびえたつ山々に反射され、それが自らが発した音なのか、大地が発する音なのか、もはや区別が付かなくなってくる。
「曲」というにはあまりにも原初的なこのトラックは、現代的な構成や盛り上がりは無いと言っても良く、大地に響き渡る音だけがそこにある。音楽というよりも、言葉に近いのかも知れない。
大地への畏怖とか、感謝とか、祈りとか。より根源的な想いや情念のような物を音に乗せて、自分以外の他者や大地に向けて、メッセージを届けているのではないか...
というか、これメタルアルバムだよな。ここまで振り切るなんて、ある意味メタル!
気が付けば原初の音にさらされ、善とか悪とか。正しいとか間違いとか。そんな物とは次元の違う、「生きている」という今を感じるだけのエンペラータイムに突入していることに気が付きます。
キャンプなんて行かなくても良いのかも知れない。
夜、窓のある部屋で。カーテンを開けて月でも眺めながら、電気を消した部屋でゆっくりとこの曲、いやこの音を流すだけで、日常とは違う何かを感じられるはず。
飛ぶぞ?